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急にシルヴァが間に入って意表を突かれたのか、男がナイフを上に振り上げた事で幸いにもシルヴァの首元に傷はなく、顎の端から口許に掛けて斜めに切り裂かれている。
セレスは安堵すると同時に僅かに動揺を覚えた。
何故、僕を庇ったんだ……?
『何故、庇う!?そいつは悪魔だぞ!!お前達の国は悪魔に魂を売り渡したのか!?』
シルヴァはいつの間に取り出したのか、長刀を鞘から抜くと、刃先を裏返して男の鎖骨めがめて勢いよく振り下ろす。
バキッ!と骨の砕ける音と共に男は衝撃で気を失った。
『俺の部下を侮辱するな』
普段は無表情のシルヴァも流石にこの時ばかりは誰が見ても分かる程、怒りを露にしていた。
俺の部下……。
何故だろう、シルヴァの言葉で胸が熱くなり泣きそうになった。
『大丈……』
バシンッッ!!
大丈夫か?
そう言おうとして、何故かシルヴァに平手打ちを食らい、驚いて呆然とシルヴァを見つめる。
怒りの矛先が今度はセレスに向いていた。
『シルヴァ……?』
『俺はお前を死なせる為に部下にした訳じゃない』
シルヴァはそう言って室内から出ていく。
セレスは暫くその場に縫い止められたように固まっていたが、軈てハッとしてシルヴァを追い掛けた。
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