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『シルヴァ!』
足早に廊下を進んでいくシルヴァに追い付く為、セレスは小走りに駆け寄っていく。
そして肩を掴んで制すと、シルヴァはようやく止まってくれた。
『……怒っているのか?』
『…………』
『悪かった……』
初めてだ。
自分から素直に謝罪の言葉を口にしたのは。
情けない事に、シルヴァの肩を掴む自分の手は若干震えていた。
『怒ってはいない。ただ、いくら死なないと言っても簡単に命を捨てる行為が許せなかっただけだ』
『…………』
何も言えずにいると、シルヴァは此方を振り返った。
その顔はいつもの仏頂面だが、確かに怒ってはいなかった。
『俺の部下なら命は大切にしろ。今後も勝手に死ぬ事は許さん』
『分かった……』
話は終わったと、シルヴァが再び歩き出そうとしたのをセレスは慌てて止める。
『何だ?』
『その……お前に言わなければいけない事がある……聞いてくれるか?』
先程の言葉が頭から離れない。
“俺の部下を侮辱するな”
どれほど嬉しかったか。
この1ヶ月、ずっと悩んでいた。シルヴァに自分の正体を明かすか明かすまいか。あの言葉でようやく決心が着いた。
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