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シルヴァが無言で頷くのを見て、セレスは気が抜けたのか、そのまま意識を失った。
『ジン!』
怪我の再生には異常に魔力や体力を消耗する。
酷い時は、1日寝込む事もあるくらいだ。
これも長年の経験から学んだ事である。
そしてこの時、セレスは気付かなかった。
直ぐ傍でシフォンが立ち聞きしていた事を。
そして、この時からシフォンの僕を見る目が変わった事を。
* * *
「具合はどうだい?」
ナイト家の広大な敷地内に建つ、とある別館の一室。
シェイドは閉めきられたカーテンを開けると、眠っている老人のベッドの傍らにある椅子に腰掛けた。
生命維持装置である呼吸器やチューブに繋がれ、微かに胸を上下させている老人はシェイドの声でゆっくりと目を開ける。
「キリクは……、キリクは何処だ……?」
痩せ細った枯れ木のような腕を動かし、宙をさ迷わせる老人の手をシェイドは軽く握ると、首を横に振った。
「……キリクなら来てないよ」
「…………」
キリクが居ないと聞いて老人、もといシフォンは再び目を閉じる。
シェイドは溜め息を吐くと、父であるシフォンの手を布団の中へ仕舞い、ふと窓の外に目をやった。
「……やはり、キリクを連れてくるべきか」
そして再びカーテンを閉じて、シェイドは部屋から出ていった。
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