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皆既月食まで後、3日。
シルヴァは、熱で魘されているセレスの額に冷たく冷やした濡れタオルを乗せて髪を撫でた。
セレスは依然苦しそうで、たまに譫言のように此方の名前を呼んでは涙を溢す。
「もうすぐか……」
「セレスの具合はいかがですか?シルヴァさん」
フッと急に背後に気配を感じ、振り返るとハーヴェイが立っていた。
「またか。お前さんも懲りん奴じゃな」
「失礼、私だってセレスが心配なんです。いけませんか?」
「何も来るなとは言っとらんじゃろうが。ただドアを開けて入ってこいと言っているだけで。そんな事も出来んのか」
シルヴァの言葉に、ハーヴェイはクスクスと笑うと、眠っているセレスを覗き込んだ。
「ジン……」
そして、セレスに触れようと伸ばした腕を、シルヴァが止める。
「……何ですか?」
「触るな。起きたらどうする?」
低く怒気の孕んだ声で唸ると、ハーヴェイは肩を竦める。
「嫌われたものですね。セレスに触れる事すら許されないなんて、まるでキリクさんと同じではないですか。以前言われましたよ。セレスに指一本でも触れたら命はないと」
「ほぉ、キリクがか。お前さんを信用していないだけじゃろう」
フォローもへったくれもなく吐き捨てるようにそう言うと、ハーヴェイは苦笑混じりに溜め息を吐いた。
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