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女はシフォンが部屋に入ると同時に椅子から立ち上がり此方を振り返る。
『あら、シフォン。その方が例の?』
『そうだ。今日は見学させに来ただけだ』
シフォンの言葉に頷き、女は此方を見ると手を差し出した。
『エリザベス・ナイトです。よろしく、Mr.ジン』
『……Mrはいらない。ただのジンでいい。お前、ナイトと結婚してるのか?』
『えぇ。なら、ジンと呼ばせてもらうわ。私の事もエリザベスでいいから』
エリザベスはそう言ってフワリと微笑んだ。
色素の薄い長い睫毛が印象的で、笑った目元が何となく気に入った。
『さっきの所が生体クローン研究室、此所は植物専門って所だな。主に稀少種の』
シフォンは何かの書類を確認しながらそう言うと、ふいに此方を向く。
『エリザベスの事はシルヴァにも言ってねぇから、余計な事言うなよ?』
真顔でそう言われ、セレスは反射的に頷いて見せた。
そして、ふと先程の事を思い出した。
生体クローン研究室と言ったか?
『お前、まさか僕の血が欲しいのはさっきの研究室の為か?』
『はぁ?』
『向こうは生体クローン研究室なんだろう?』
『あぁ、その事。誰がお前を彼処なんかに。あれはオレの独断だ』
シフォンは憎々しげに吐き捨てるようにそう言った。
向こうの責任者と何かあったのだろうか。
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