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悪戯に不安を煽る事はしたくないが、シルヴァをジッと見つめていると、軈てシルヴァは口を開く。
『俺がまだ新兵だった頃の大佐が此処で戦っていた時に仕掛けた地雷だ。其処は磁場が強く、魔術の類いはほぼ無効になるし、レーダーで探知されにくい。だから未だに残っている』
地図の、恐らくは地雷がある辺りを指で叩きながらシルヴァは浮かない顔で言った。
敵が罠に嵌まってくれれば此方としてはそれに越した事はないが、何がそんなに気に入らないのか。
セレスは再び不安げな表情を浮かべ始めた兵達を宥め、配置に付くよう促した。
『なぁ、シルヴァ』
『何だ?』
『……敵兵でも罠に嵌めるのはやはり心苦しいか?』
『…………』
セレスの唐突な質問にシルヴァは眉間に皺を寄せると此方から目を逸らす。
『そうじゃない。ただ、前任のやり方が俺は気に食わんだけだ』
最初から折り合いが悪かったのだとシルヴァは思い出すようにポツリと言った。
セレスは、シルヴァの前の上官が誰だったのか知らない。
だが、少しでもシルヴァの本音が聞けて嬉しく思う。
部下に気を抜くなと言っておいて自分の気が抜けそうだったのを直ぐに引き締め、セレスも自らの配置に付いた。
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