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そしてその夜、セレス達の待機する陣地の直ぐ近くで、爆発音が響き渡った。
一斉に幾つもの地雷が弾け、悲鳴が上がる。
味方のではなく、襲撃を今か今かと待ち構えていた敵兵の悲鳴が。
『…………』
セレスは炎で赤く照らされた方向を一瞥すると、被っていた帽子の柄に手をやった。
罠に嵌まったのは向こうの自業自得だ。
とは言え、予期せぬ事態に訳も分からないまま地雷で消し飛んだであろう顔も知らない敵兵に黙祷を捧げた。
シルヴァも、眉間に皺を寄せたまま難しい顔でセレスと同じ方向を見つめ、そして直ぐにそこから顔を背ける。
僕達は前に進まなければならない。
例え、何千何万と犠牲を払ってもこの戦争に勝利する。
それが死んでいった者達に出来る唯一の手向けなのだから。
『総員、敵襲に備え、直ちに配置に着け!』
地雷で消し飛んだ部下達の死を無駄にしない為に、敵兵は明け方を待たずして此方の陣地に攻め込んでくる。
シルヴァは無線に向かって声を張り上げると、セレスの所へ走った。
『戦況はどうだ?』
『向こうも捨て身の覚悟だ。あまり良いとは言えないな』
セレスが現状を報告すると、シルヴァは溜め息を吐く。
『此処で負ける訳にはいかん。此方も全力で迎え撃とう』
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