508人が本棚に入れています
本棚に追加
『理由は後で構わん。取り敢えず保護しろ』
啜り泣く、恐らくは敵国の子供に手を差し伸べると、子供は直ぐにその手を取って立ち上がる。
『言葉は分かるか?』
『…………』
通じてはいるのか、何も答えない代わりに僅かに縦に頷いたのを見て、この様子なら何故こんな戦地に少年兵でもない子供がこんな所に居るのか理由が聞けそうだ。
シルヴァ達は敵兵と出会さないよう細心の注意を払いながら林の中を突き進んでいく。
そして数分後、シルヴァ達は漸く仲間が居る他の持ち場に辿り着いた。
『大佐!無線が通じないので心配しました。ご無事で何よりです』
『ああ……』
連絡基地に近い所のお蔭なのか、此処は四方に散った仲間達からの通信電波をキャッチしやすい。
ある無線機が他の電波を受信したのか、電子音が響いた。
『ザザッ────……れか、……ないのか?……ガガッ────シルヴァ!ブツッ……』
無線は直ぐに切れた。
今の声は、勘違いでなければジンのもの。
切羽詰まったような焦る声には余裕はないように思える。
シルヴァは眉を寄せると、先程通信が途絶えた無線機に手を伸ばし、護衛数名に子供を任せその場を離れた。
少しでも電波の入りやすい所を探す為である。
最初のコメントを投稿しよう!