覆水盆に返らず

2/2
23人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
ある男を女性が訪ねてきた。 男の名は呂尚、周の武帝の名参謀:太公望としてのちのちまで語り継がれる人物である。 女性は馬氏、呂尚の妻であったが、正業につかず釣りや読書ばかりしていた夫に愛想を尽かし実家に戻ってしまったのだが、そのぐうたら亭主が周の重臣になったのだから馬氏は復縁を求めてやってきたのである。 詫びて懇願する元妻にたいして呂尚は盆に入れた水をこぼし「それを元通り盆に戻して見なさい」と言う。水をすくうため身を屈める妻、しかしすくい取れたのは僅かな泥水だけだった。 「覆した水は二度と盆におさめられないだろう、夫婦というものもこれと同じなんだよ」 と冷たく言い放った。 -糸冬-
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!