序章 夏休み

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なんとか踏ん張った空は、後ろを振り向くと妹を叱り始めた。 「ちょっと!押さないでよ!痛いでしょ!」すると、海が怯えた様に震えながらバスから降りた。 「お、お姉ちゃん……顔が…怖いよぉ。」見てられなくなった燕が、空を泊めようと近寄った。 「こらこら、お姉ちゃんが妹を泣かせちゃだめでしょ?」燕が空の前まで来ると、小さく空が舌打ちするのが聞こえた。 「ちっ……ちぇ、ツバメン達に見つかっちゃった…残念ね、海。」仲直りしたのか、空が海の肩を軽く叩いていた。ちなみにツバメンとは、空がつけた燕のあだ名だ。 「…よっ、お前等も来たのか。大分増えたかな?人数。」章が空に近寄ると、空が少し距離を置いた。片や海の方は、ひたすらに章の顔を虚ろな目で見詰めて呆けていた。 「…いやぁ、絵になるよ!実にいい。…あっ、ところで人数の方だけど…ええっと……[戸高 昴]と[戸高 瑠璃]は現地集合、[堺 利明]は遅れて来るそうだ。そして、残りはすべてドタキャンだよ…」真が、メモ帳を取り出して中身を確認し、皆に伝えた。丁度その時、バスのブザーが鳴り響いた。 「とりあえずは、現地到着が最優先だよ。」真が指示を出すが、カメラを回しながらなので、全然説得力が無い。しかし、皆そこは無視してバスに乗り込んだ。そして暫く単調な風景を見ていると、前方に海が見えてきた。そして、バスが到着した時には一面に海が広がっていた。 「わぁ…やっぱり来てよかったよぉ。」バスから真っ先に降りた燕が、伸びをしながら一人で呟いた。そうした間にも次々と人が降りて来た。そしてやっと全員降ろしたバスは、扉を閉めて走っていった。そして、バスのマナーで禁止されていたカメラを、真がまた回し始めた。こんなので電池が持つのか心配だ。 「…いやぁ、やっぱりいいモンですな~。」真が、右手にカメラを左手にバッテリーのコードを握りながら興奮していた。 「とりあえずは場所取りしようぜ…」真の行動に呆れた章が、真の肩を軽く叩いた。 「そうだよね。先ずは場所取りをしないと始まらないよね。よーし!皆、張り切って行こー!」燕が号令を掛け、皆もそれに合わせた。そして、皆で固まって良い場所を探し始めた。すると、海から少し離れた場所に木陰になっている場所を見つけた。そこにシートを広げた燕達は、男性陣に番を頼み更衣室に向かった。
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