序章 夏休み

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暫くすると、男子更衣室が見えてきた。ふと後ろを振り向くと、自分達のシートが凄く小さく見えた。ため息をつきながら更衣室に入った章は、素早く着替えを終わらせようとしてテキパキと着替えを済ませた。すると、章の良く知る人物が更衣室に入って来た。 「………おっ!時任じゃないか!遅れてスマン。だが、只今到着した。」堺が章の肩を軽く叩いて笑った。しかし、軽くとは言ったものの堺は、去年迄は中学校のボクシング部主将で、今は堺の通っている高校のボクシング部次期主将候補No.1だ。なので、堺の軽くは皆にとっては相当痛いのだ。それこそ、昔に真をデコピンで気絶させた程に。 「さて…と。荷物も置いたし、着替えるか。」堺をガン無視していた章を見た堺は、ため息を吐いた後に着替えを始めた。 「……遅いなぁ、章…」昴が、暇そうに空を仰いでいた。そう、燕達は昴に荷物番を任せると先に海に走っていったのだ。 「…瑠璃ネェ達……楽しそう…」三角座りをしながら瑠璃達を観察していた昴だが、急に目眩に襲われた。 「…うっ!まさかこんなに暑いなんて…倒れそうだよぅ…」昴がグラグラしていると、後ろから誰かが昴を支えた。昴が振り向くと、そこには着替えを終えて戻って来た章の姿があった。 「…章…ありがとう…」少し顔を赤らめた昴だが、章にはそれが見えていなかった。 「…あの…その…」昴がチラチラと章を見ながら何かを伝えようとしていた。それを感じ取ったつもりになった章が、それを信じ込んだ。 「荷物番から離れて皆と楽しく遊びたいんだろ?…俺が荷物番、代わるから行っていいよ。」期待してもいない言葉を浴びせられた様に口をポカンと開いていた昴だが、急に皆と遊びたい気持ちが押し寄せてきた。 「…え?…う…うんっ!それじゃ、任せたよ。」話を済ませた直後、昴はサンダルを履いて海に走って行った。暫くすると、章を見つけた堺がシートに座り込んだ。 「…章…その…修学旅行みたいでスマンが……好きな子とかいるか?」唐突に素っ頓狂な話を切り出した堺だが、下らないと思った章は首を横に振った。それを確認した堺は、少し俯いていた。 「……荷物番は俺が引き継ぐ。だから、お前は皆と一緒に遊んでこい。」それを聞いた章は、堺に一礼した後に急いで燕達のいる場所へと向かった。
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