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美術室へ行くと、すでに澤村さんの姿はあった。
澤村さんは、俺に気づくと、「よっ」と無表情で手を振った。
あのときと同じだ。
「何描いてるの?」
と、訊ねると、彼女はふっと笑って
「ひみつ」
と言った。
気になる。
「えいっ」
「あっ、ちょっ…」
俺は、澤村さんの後ろにまわり、描きかけの絵を見た。
そこには――…
「これって…」
「うん」
絵には、美術室の窓から見える、俺の姿が描かれていた。
「ほんとはね、美術室から見える桜を描きたかったんだけど、君の…速水くんの姿が見えちゃってさ……」
と、俯く澤村さん。
澤村さんの絵に、自分が描かれるなんて、嬉しい。
俺たちの距離は、少しづつ縮まっているのかもしれない。
友達以上になれる日は、そう遠くないかも?
ファイト、俺!!
~速水編~終
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