飛び降り志願者と変な人

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 僕は購買という戦争に勝利し戦利品である炭水化物の上に炭水化物を乗せるという斬新すぎるパン、すなわち焼きそばパンとコーヒーと牛乳が奇跡のコラボを完成させた飲み物、すなわちカフェオレを手に意気揚々と学校屋上への階段を歩いていた。  飛び降り自殺を防止するため屋上は使用禁止だ、鍵もかかっている。しかしピッキングスキルを持つ僕を前においては無駄でしかない。  というか飛び降りなんかしなくたって自殺の方法は様々あるから屋上の使用禁止って実は無駄なんじゃないかと思う今日この頃。  屋上に入るための所々、錆び付いた扉の前についた。学ランの裏ポケットに常備している、楽々ピッキングセット(定価13500円)を取り出し作業を開始する。  鍵穴にピッキング道具を突っ込む。大体、作業は三十秒あれば終わる。だが気付く。 「開いている?」  そう開いていたのだ。まさか僕と同じようなピッキングスキルを持ち合わせる輩が現れたか? だとすれば、あまり喜ばしい事ではない。  基本、一人が好きな僕にとって誰もいない屋上での食事は集団行動を強制的にしいられる高校生活において砂漠のオアシスようなものだ。  それが奪われようものならリアルに登校拒否になりかねない。そして不良が居たら即座に逃亡してやるとチキンな事を考えながら、僕はゆっくり扉を開いた。
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