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「―――いつになったら、安心させてくれるの?」
当直明けで眠たい状態にも関わらず、朝っぱらから母、美波は智貴に結婚相手を早く連れてこいとせがむ。
〔またか…〕
智貴の耳には、タコが出来ていた。
「心配しなくてもいつかは、結婚するから」
「31にもなって結婚してないなんて考えられない
お母さんは、20代前にはあなたを育ててたのよ?」
〔あんたの場合は、早すぎなんだって…〕
ため息が溢(こぼ)れる。
「はい、はい、分かりました…
今、付き合ってる方を今度紹介します」
めんどくさくなってきた智貴は、話を早く終わらせる為、美波の要望に答えてあげる動きを伺わせる。
「ホントに?
じゃあ、料理を振る舞わなくっちゃね♪
あー、楽しみだわ♪」
まんまとその気にさせられた美波は、ご機嫌に鼻唄を歌いながら、何処かに行ってしまった。
〔付き合ってる方っていうか、セフレなんだけどねぇ…
まぁ、形だけでも安心させてやるぐらいは出来るかな?〕
美奈子の死から8年、31になった智貴は、相変わらず女性に不自由していなかった。
〔早いな…
ねぇ、叔母ちゃんあんたがこの世を去ってから、もう8年も経ってんだぜ
倖は、院長になったよ…
そうそう、琢磨には、びっくりするぜ?
だって、あいつ1児のパパになってんだぜ?
あんなに女に怯えてたのにな(笑)
いつまでも、宙ぶらりんは、俺だけになっちまった…
……
1年前、爺ちゃんが亡くなっちまったよ
それを追うかのように、婆さんも…
そっちで皆、仲良くやってる?〕
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