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暖かみのある木造の一軒家はまだ木の香りがするような気がした。
神楽は顔を洗い、席に着くと新聞を広げた。
テレビではニュースキャスターが怖いほど冷淡に口を動かす。
「今日はちょっと起きるの遅かったんじゃない?」
せかせかと、それでいて丁寧に朝食を並べている奈月はずいぶんと大人になった。
「最近寒いからね。なかなか起き上がれないよ。」
まだ二人の間に授かり物はなく、今のうちに貯金を増やそうと共働きの生活をしている。
「遅刻しないようにね。」
高校時代、遅刻ばかりしていた奈月にまさかそんな一言を言われるようになるなんてあの頃は思ってもいなかった神楽は、新聞を閉じながら苦笑いを浮かべた。
あれから、どれ程の時が経ったのだろうか…。
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