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「先生!先生はスカートを履かれますか?」
わたしはいつも笑顔の彼女の背中に声をかけました。
彼女は、すっと振り返って微笑みました。それから『あー履かないなあ』と照れ臭そうに答えました。
「どうしてですか?」
わたしが首を傾げると、彼女は『可愛い』と笑いました。
わたしは彼女が怖いのです。
彼女は男女ともに生徒に人気のある素敵な先生でした。生徒をめったにしかりません。生徒をたくさん誉めるのです。それはもう、明るい笑顔で。
わたしはその笑顔が怖いのです。彼女がわたし達に次を求めているような気がするからです。
でも、そんな事を思っているのはわたしだけらしく、友人に言っても首を傾げます。
いいえ、彼女の事はどうでもいいのです。
わたしは彼女が、貴方と一緒に居るところを見てしまった。
それだけなんです。
「わたしは、可愛くありませんよ。…わたし、先生がスカートを履いている姿を見たことがないのですが」
彼女は、いつもジャージを着ています。
女性なのに可愛らしい服を選ばない彼女。それでも彼女は魅力的なのです。
そんな彼女にわたしが勝つには、女のコらしさを磨くしかないと思ったのです。
なぜなら、わたしみたいな人間は、それ以外で彼女に勝てっこないからです。
彼女はうーんと唸ってから『あたしには似合わんからなあ』と笑いました。ああ、本当に笑顔の素敵な人だと、わたしは落胆しました。
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