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彼女は『貴女は履かないの?』とわたしに問いました。わたしがスカートを履くのかなんて、彼女は興味があるはずがありません。どうせ何か考えがあっての事です。
でも、わたしは微笑みました。
「スカート以外は履かない主義なので」
『そうね、貴女にはスカートしか似合わないんだろうね』と彼女も微笑みました。
ああ、どうせ彼女もわたしを探っているのでしょう。そして、わたしには女性的な魅力が全くないということを知らしめようとしているのです。
どうせわたしは、所詮女のコです。
「先生にもスカートは、似合いますよ」
わたしは、彼女に勝てっこないと半ば諦めていました。それでも、貴方を好きだという気持ちは失いたくないのです。
わたしは貴方が好き。それはもう、世界中の何よりも誰よりも。
女のコと女性では、恋をするには女のコの方が優位なのです。しかし、愛を語るには断然女性が優位なのでしょう。
ましては、貴方とわたしは先生と生徒。
貴方にとって、わたしは気がつきにくい受け皿のようなものでしょう。貴方はきっと、コーヒーの入っているカップばかりが目に入ってしまい、わたしには気がついていないのです。
でも、恋は女の戦争です。どんなにハンディが有ったって出来るだけ対等な立場で戦わなくてはいけないんです。立場が同じならば、どんな作戦を仕掛けたって恨みっこ無しなんですから。
「好きなら…、先生がスカートを履きたいのなら、挑戦すべきです。大切なのは、どう見えているか、じゃなくて、どう在りたいのか、だと思います。だって、他人に見せるなら好きな自分でいなくっちゃ」
わたしは微笑みました。ええ、心から。
彼女も『なるほど』と頷きました。それから、『ありがとう』と笑いました。多分、心から。
「あ。こんにちは」
妙な空気で微笑み合うわたし達に声を掛けてきた人がいました。
「こんにちは!」
慌てて挨拶を返すわたしと、軽く会釈をする彼女。
話しかけて来たのは貴方だったのです。
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