7人が本棚に入れています
本棚に追加
「あら、珍しい組み合わせ」
貴方が笑いました。
「女の話をしていたんです」
「なるほどねえ」
わたしが言うと、貴方は興味深そうに頷いていました。
「僕は仲間外れですか?」
貴方は、笑いながら残念そうな言い方をしました。
彼女が『先生は男性でしょう』と笑いましたが、わたしがそれを遮りました。
「…そうでもないですよ」
貴方が首を傾げました。
「どんな話なんですか?」
貴方の問いに、彼女が『スカートの話です』と答えました。
それにわたしも頷きました。
「僕はスカートなんて履きませんよ」
「わかってますよ」
貴方は不思議そうな顔をしていました。
それはそのはず、貴方とスカートは全く関係がないのですから。
それでも、貴方はこの会話に関係があるのです。
次の日、彼女はスカートを履いていました。繊細なプリーツを揺らして、恥ずかしそうに笑う彼女は、女性よりも女のコに近いような気がしました。
「先生、スカート似合ってましたね」
「そうみたいですね」
貴方は笑いました。
貴方が、彼女の姿を見てどう思ったのか全くわかりませんでした。でも、探るつもりはありません。
この戦いで、貴方の心を探ったりするのはフェアじゃないのです。
彼女の悪口を言ったり貴方に泣きついて同情を誘ったりしても、貴方の心を探ることだけはしてはいけません。
きっと、彼女にもわかっているはずでしょう。
彼女は美しい。ええ、全くその通りです。
「多分、彼女は君が好きなんだと思うよ」
「えっ?」
わたしは貴方を見上げました。
「ライバルだね」
貴方は笑っていました。それはもう、素敵な笑顔でした。
「…誰と誰がですか?」
「皆には内緒だから、言えません」
貴方は笑って、人差し指を唇に当てました。
わたしは、そうしてさっていく貴方をじっと目で追いました。
「先生は貴方が好きなんだと思います」
どうしてなのか、伝えようと思った言葉は思ったよりも小さくなっていました。
最初のコメントを投稿しよう!