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とある町の片隅にあるビルの1フロアに、桐谷探偵事務所がある。
所長は桐谷拓真。
半年前に、事務所を継いだ。以来、受けてきた依頼は、猫の行方探しや、浮気の素行調査など。
拓真の素晴らしい推理能力を披露する機会のないものばかりだった。
そしてこの日を迎えた。
「行方不明の父を探して欲しいのです。」
これこそ、俺の望んでいた探偵の仕事!
心の中でガッツポーズをしてから、咳払いをする。
「ゆ、行方不明とは?」
興奮して、声が裏返ったが、また咳払いをして誤魔化す。
その間に、事務員の夏未優子が拓真と依頼に来た女性にお茶を出す。
こと、お金に関しては細かい女性で、まあいいじゃん。とはいかないから、拓真は煙たい。
眼鏡をかけて、後ろに一つで結んだだけの色気のないルックスも煙たく思う理由だが。
それはともかく。
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