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実花の案内で、部屋を見て回る。父親の部屋に入って、特に念入りに調べた。
「これが、中山さんです。」
実花の手には会社の慰安旅行らしき写真。
少々小さいが、顔の判別はつく。
「これ、お借りしてもよろしいでしょうか?」
今まで一度も拓真の仕事(調査)に着いて来たことがない、優子が一緒にいた。
別に、いても邪魔にならなければいい、と思って反対はしなかったのだが。
無言の圧力を感じて少し息苦しくなって、後悔している。
次からは、着いて来ないよう、説得してみよう。
そんなことを思いながら、拓真は写真を指差した。
「この方以外に仲のいい人は?」
「さぁ…。あまり仕事のこととか、話さない父なので…。」
困ったように実花が首を傾げた。
拓真はそんなものか、と思ったが、優子が口を挟む。
「失礼ですが、お仕事の話をされないお父様が、中山さんのことだけ話されたのは、何か理由が?」
拓真はムッとする。
そういう質問は、自分がすることだし、何を質問するかも探偵である自分が決めることだ。
拓真が注意するより早く、実花が答えた。
「中山さんの息子さんは、私の小学生時代の同級生なんです。
運動会で顔を合わせて以来、私にも中山さんのことだけは話してくれたので…。」
優子は納得したのか、それ以上言わなかった。
依頼人を疑うとは…。後で叱ってやろう。と拓真は考えていた。
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