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プ…プルプルプル…と機械音がしてきた。
「あら。電話。誰かしら。…少々お待ちください。」
実花が一礼する。
礼儀のなった人だと思いながら、ここぞとばかりに、拓真は優子に小言を言う。
「夏未。君ね、さっきの質問はなんだい。
依頼人を疑うような…。」
優子は我に返ったようにはっとなりながらも、拓真の言葉に静かな声で反論する。
「お言葉ですが、所長。」
探偵事務所だから、所長だ。
「あのくらいの質問は、当然のことではないでしょうか?」
拓真はムッとする。上司に対して、なんて口の利き方だ。という気分。
「例えそうだとしても、質問をするかどうかは、所長であり、探偵である俺が決める!」
優子は、一瞬唇を噛んだが、すみませんでした。と俯いて謝った。
全く、親父もなんだってこんな堅物で可愛くもない女を事務員にしたんだか。
ああ、そっか。金の管理にちょうどいいのか。まあいい。そのうち、仕事の厳しさを教えて辞めてもらおう。
拓真が事務所を継いだ時には、すでに優子はいたため、一体どういう経緯で雇ったのか、知らない。
辞めさせるな。と言われていたが、こっちにもプライドがある。いつまでも言うとおりにしてはおけなかった。
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