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――……
気が付くと目の前で女の人がこちらの方を向いて立っていた
白いベッドから上体を起こして、二人とも何か喋る訳でもなくただただ目線を合わせていた
その人はただ何かを話し掛ける訳でも無く何かをする様子もなくこちらだけを見ていた
表情を見ようと思ったが、まるで消ゴムで消された絵のように顔に霞が掛っていて見ることが出来なかった
けれど表情が見えなかったがどこか寂しそう、そしてその人を見てどこか懐かしい、そんな感じがした
そしていきなりと後ろに振り向き、何も言わずにゆっくりと歩き出してしまった
――待った、あんたは誰なんだ?
尋ねる為に声を出した筈なのに喉から声が出て来なかった
そして追いかけてもどんどん離れていく様な、自分の中の思い出の記憶が真っ白になって消えて行くようなそんな感覚が襲って来た
それに同調するように女の人の姿も霧の様にぼんやりと消えて行った
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