meeting

7/10
前へ
/82ページ
次へ
 公平はそう思うが、幼い頃からの付き合い故に、学の研究オタクっぷりもわかっているので、学には無理なことだとわかっている。幼い頃から一緒に育ち、三つ年下の学は、お互いに一人っ子と言うこともあって、公平には弟のような存在だ。 「……あなたは……」  貴子が目を覚ましたようだ。 「気付いたか。……おっと、いきなり起き上がらないほうがいい。今、学を呼んでくるから。そのままにしてな」  本当にタイミングが悪いな、学は。  公平は早口に言うと、部屋を後にした。  柳公平と言ったかしら、あの人。  ベッドの中で、貴子は倒れる前のことを思い出していた。  私が夫だと勘違いしていた人。でも、本当はあの人じゃなくって、最初にいた、あぁ、まるで使用人のような人。名前は松浪学。  自分の勘違いからの言動に、彼女は恥ずかしさと屈辱で、大きなため息をついた。  こんな始まり方ってあるのかしら? ましてや、私は政略結婚なのに……。うまくいかなくては、西園寺家の復興にも関わってしまうのに。  その時、控えめなノックの音がした。 「貴子さん。……いいですか?」  学の声だ。彼女は「はい」と促した。 「失礼しますね」  そう言って入ってきたのは、学だけではなかった。いや、公平ぐらいまでは予想できていたのだが、さらに二人、いた。 「初めまして、貴子さん。学の父の、幸之助です。こちらは家内の翠です」  ニコニコとした眼鏡の老人が、自分と、着物をきれいに纏った女性を紹介した。 「来て早々大変でしたわね。大丈夫かしら? また公平さんがいじめたんではなくって?」  学の母・翠は笑って軽く、公平を睨んだ。公平も慣れているのだろう、笑って受け流した。
/82ページ

最初のコメントを投稿しよう!

91人が本棚に入れています
本棚に追加