ある死

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その電話が鳴る前から、私は起きていた。 目を開けても暗闇だったが、気配で朝が来た事が分かる。 朝一番の新聞を配達するバイクの音。 市場に勤める隣のおじさんが、出勤していく車の音。 そして、母が起き出し台所に立っている音。 母が台所に立つのは5時半頃。 父と、高校三年生の弟のお弁当を作るから、母は早起きをして作る。 お味噌汁のお味噌をたてる香り、卵焼きを焼く匂い、コトコトと台所から聞こえてくる音に、私は朝の幸せを感じる。
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