第一話

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あの不動産屋から近いと聞いていたわりにはマンションまで20分もかかってしまった。やはり地図を片手に初めての道を歩くと時間がかかる。 来る途中にはバス停やコンビニ、病院や学校などがあった。生活をするには困りそうもない。 駅から少し遠いが自転車を使えば何て事はないだろう。 「ここか。…うっわぁー。でけぇ……」 辿り着いた場所には俺のように二十歳そこそこのクソガキが住むには似つかわしくない、高層マンションが待ち構えていた。 マンションは上だけでなく横にも広く、中央には噴水広場。また敷地内には歯医者や美容室、それにスーパーなんかも入っている。 「こんなとこ……」 言葉が出ない。当然の事だ。この敷地に住んでいいのは人生の勝ち組。きっと年収が聞いたこともない桁で、毎月の食費なんか気にもせずに好きなものばっか食って生きてる勝者なんだ。 とりあえず俺は地図の下に書いてあった管理人の元へ行くことにした。 管理人が住むのはこのマンションの一番端の棟、最上階15階にある。 上にいくには当然エレベーター。良くホテルで見る様な外が見えるガラス張りのエレベーターだ。 高いところは苦手ではないが、さすがに目の前の景色に鳥肌がたつ。下なんか絶対見れない。 俺はガラスから一番遠い扉の近くで早く15階に着くのを待った。  
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