プライスレス

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プライスレス

タバコをふかしポケットに手を突っ込み サングラスの向こうの黒っぽい世界を進む。 路肩に乞食がいるのに、隣の店にはリムジンが止まっている この町では見慣れた風景だ しかし、今日の俺は少し違った 慈善事業をする気になれた 乞食の目の前のアルミの缶に百円硬貨を投げ入れる。 乞食は立ち上がり礼を言い リムジンに乗り込んだ 俺は咥えたタバコを落とし、 次の瞬間には眉間に皺を寄せた。 「てめぇ、騙しやがって!」 「すまない、  しかしこうしないと  私は誰にも愛を貰えない身でね」 彼の言う事を理解するのに 少し時間はかかったが 俺はまた新しいタバコを取り出し 火をつけながら手を振った
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