木守り

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木守り

「庭の蜜柑の木見えるか? 一個だけ下がっとるやろ」 久々に会ったのに そんな話しかできないの? アンタっていつもそう 「あの蜜柑な、一年ほったらかしやねん。もうとっくに中身はスカスカや」 幼なじみのアンタと実った恋は自然消滅、それから何年も変わらないまま まるで私の恋の実みたい 今はそんな話聞きたくないのに アンタっていつもそう 「だけどな あの蜜柑には意味があるねや 木守り(きまもり)言うて 来年も沢山実が成るように 神様に一つだけ残してんのや」 恋の実が揺れたような気がした 私のアンタへの恋は、新たな恋を実らせるための木守り 私はこの恋に見切りをつけて、幸せな実をつけるためにここに来た 『アンタっていつもそう』 私のこと何も解ってないのに 一番言いたくない事をほぐしてくれる そんな所 好きでした 蜜柑のように甘酸っぱくて
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