紙切れ

3/5
前へ
/28ページ
次へ
「お待たせ致しました。ご注文を承ります。」 この瞬間は、営業スマイルなんか造らなくたって、自然に笑顔になる。 「コーヒーとオムライスちょうだい。」 「はい…かしこまり…………え?!」 思わず聞き直す。 「今日はサンドイッチじゃないんですか?」 私から話し掛けるのは初めてだ。 「あ、いつものメニュー分かっててくれたんだね。昨日帰りが遅くなって、夜ご飯食べずに寝たから、お腹すいちゃってね。」 「そうだったんですか。お仕事大変なんですね。お仕事に遅れないように急いでお作り致しますね。」 本当はもっと話していたいけど、 オムライスだとサンドイッチよりちょっと時間がかかるから早くしないと会社に遅れちゃうかもしれないから、すぐに作って出さなくちゃ。 「亮太!オムライス!ものすごく急いで美味しく作って!!」 あんな事言っておきながら、作るのは亮太なんだけどね。 「はいはい。」 そして私はコーヒーを作る。 うちの喫茶店は豆から作るから、誰が作るかで結構味が変わる。 だから、精一杯美味しくなるように、頑張ってコーヒーを作る。 また“君の作るコーヒーが一番美味しい”って言ってもらえるように。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加