紙切れ

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「ごちそうさま。」 コーヒーを飲み終わって、 彼がレジの方に歩いて来た。 「840円になります。」 「はい、ちょうどね。」 彼はぴったりのお金をレジに置いて、すぐにお店から出ていってしまった。 「ありがとうございました~」 ドアにかかった鈴が鳴って、亮太の声が奥のキッチンから聞こえる。 いってらっしゃい、と言いたい所を我慢して、“ありがとうございました”と小さく呟いた。 「はあ…今日もかっこよかったな…。」 大きくため息をついてお皿を片付けに向かった。 やっぱりこの時は、すごく悲しい。1日の楽しみが終わってしまうのだから。 明日もバイトがあるから、まあいっか。って思うしかないよね。 そんな風に思いながらお皿を持ち上げたら、1枚の小さな紙が置かれていた。 《 片桐隆司  090ー……………  …………@….jp  もし良かったら。》 「嘘………。」 私はその小さな紙切れを何度も何度も見直した。 これって…私宛だよね? 騙されて無いよね? 他にお客さんはいないのに、周りを見渡してから、誰にも見られないようにこっそりポケットにその紙切れをしまった。 なんとなく、この事はまだ亮太にも言っちゃいけないような気がして、 早くなっていく鼓動を必死に抑えるために、 大きく一つ深呼吸をした。
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