第2話 ある領主の怒りと、心優しき奴隷達

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晩秋の頃、雪国であるフェルナンデス公国は既に雪がチラついていました。 私ことシーグ様の奴隷、メイドのエリスは雪が大好きです。特に降り始めのワクワク感などたまりません。暖かい部屋から降り積もる雪を見るのも、またおつなものです。 しかし今年は例年より雪を楽しめないかもしれません。 だって雪は白いものでしょう? 赤い雪なんて好きになれません。 ◆◇◆◇◆ 「早く警団を呼んでくれ!」 人々の叫び声が耳に痛いくらい聞こえます。 「うちの子が幽鬼に!誰かあああ!」 「散れ!」 シーグ様の喝と共に、半透明な鬼の姿をした幽鬼の姿がかっ消されます。 そう、フェルナンデス公国は幽鬼の襲撃を受けていました。 「ありがとうございます。領主様」 シーグ様に助けられた子供を抱きかかえながら、母親とおぼしき女性が頭を下げてきます。 「早く非難して下さい」 頭を下げ続ける母親を制し、避難所の方を指差す私。避難所にはシーグ様の奴隷と警団の人々が待機しています。 「敵の数が多い。魔導師が圧倒的に不足しているな。こんど大量に雇い入れるか」 幽鬼は幽霊族の特徴を持った鬼です。 しかし幽霊族は物理的な物には一切触れられないのに対して、幽鬼はそれが可能です。しかも向こうの攻撃に限りという性質の悪さ。こちらからの物理攻撃は一切効かないのに対して、向こうは鬼族の力を思う存分振るえます。 一見無敵に思える幽鬼ですが、その実幽霊族の特徴を受け継ぎ、魔導でのみ倒すことが可能です。
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