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「安心しろ。俺様が金づる(領民)を犠牲にする訳ないだろ」
シーグ様のその言葉にホッと一安心。しかしそれも一瞬のことでした。
「早く屋内に入るぞ」
「えっ?」
私の手を引き手近な店へと入り込むシーグ様。その店内は荒れ果て、店主と思しき人の亡骸がありました。
「何故屋内に入るのですか?」
店主に冥福を祈りながら、私はシーグ様に尋ねました。
「痛いから」
(グギャアァァァ)
シーグ様の言葉の後に聞こえてきた醜い叫び声は恐らく幽鬼のもの。シーグ様の魔導が発動した結果でしょう。
(いててて!)
(何だこれ!?ちょっ、痛っ!)
……そして後から聞こえてきたのは領民達の声だと思います。
「どういうことですか?」
まるで雹に打たれているかのような音が響きます。それに負けじと私はシーグ様に尋ねました。
「『雨』の威力を限界まで殺した。幽鬼は魔力の奔流程度で死ぬみたいだからこれで十全だろ」
店の外に目をやると降り続く光の雨。そしてそれに打たれる幽鬼と領民の姿。
幽鬼は光の雨に触れた瞬間叫び声と共に消滅し、領民達は頭を守りながら逃げ惑っています。見るからに痛そうです。
「そろそろ止めてあげては?」
「まだ幽鬼の気配が残ってる。目を付けていた娘達が被害にあったらどう責任をとるつもりだ?」
「……すみませんでした」
私はこれ以上何も言えません。一応死者も出ている状況ですし。
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