第2話 ある領主の怒りと、心優しき奴隷達

4/11
前へ
/88ページ
次へ
「安心しろ。俺様が金づる(領民)を犠牲にする訳ないだろ」 シーグ様のその言葉にホッと一安心。しかしそれも一瞬のことでした。 「早く屋内に入るぞ」 「えっ?」 私の手を引き手近な店へと入り込むシーグ様。その店内は荒れ果て、店主と思しき人の亡骸がありました。 「何故屋内に入るのですか?」 店主に冥福を祈りながら、私はシーグ様に尋ねました。 「痛いから」 (グギャアァァァ) シーグ様の言葉の後に聞こえてきた醜い叫び声は恐らく幽鬼のもの。シーグ様の魔導が発動した結果でしょう。 (いててて!) (何だこれ!?ちょっ、痛っ!) ……そして後から聞こえてきたのは領民達の声だと思います。 「どういうことですか?」 まるで雹に打たれているかのような音が響きます。それに負けじと私はシーグ様に尋ねました。 「『雨』の威力を限界まで殺した。幽鬼は魔力の奔流程度で死ぬみたいだからこれで十全だろ」 店の外に目をやると降り続く光の雨。そしてそれに打たれる幽鬼と領民の姿。 幽鬼は光の雨に触れた瞬間叫び声と共に消滅し、領民達は頭を守りながら逃げ惑っています。見るからに痛そうです。 「そろそろ止めてあげては?」 「まだ幽鬼の気配が残ってる。目を付けていた娘達が被害にあったらどう責任をとるつもりだ?」 「……すみませんでした」 私はこれ以上何も言えません。一応死者も出ている状況ですし。
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1239人が本棚に入れています
本棚に追加