第2話 ある領主の怒りと、心優しき奴隷達

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「では幽鬼は生物ではなく幽霊族のような反生物体(生物としての特徴を一切持たないのに、意志を持って動くものの名称)ということですか?」 「まあ、半分はそういうこと。だがそんなことは一目で分かっていただろ。俺様が言っている生物じゃないという意味は魔導で造られたもんだってことだ」 魔導で造られたもの!? 「ということは」 「ああ、裏でこそこそ糸引いてる奴がいる」 なんてことでしょう。そんな最低な奴のために大勢の人が死に、異種族は差別を受けている。そんなの許せません! 「そしてそいつは俺様の国を狙った。例え失敗に終わろうがそれは万死に値する行為だ」 久しぶりに見るシーグ様の怒りの目。直視すれば飲み込まれてしまいそうな漆黒の瞳。 「よって俺様は俺様の全てをかけ、全身全霊をもってそいつをブチ殺す」 無属性、フェルナンデスの魔導書。『月の瞳』 魔導書には既存のものと、個人や家系で作り出したものがあります。既存のものはお金さえ払えばだいたい手に入れることが出来ますが、そうでないものは所謂秘伝と呼ばれるもので、一般に出回ることはまずありません。 そしてシーグ様が使ったのはフェルナンデスを公爵家にまで引き上げた術、『月の瞳』 情報を知るという一点において、この術の右に出るものはありません。 スッと空を見上げて見ると、そこに浮かぶは漆黒の満月、もとい巨大な瞳。鳥肌が立つほど気持ち悪いです。 「おい、気持ち悪いとか思うな」 シーグ様にチョップを貰った頭をさすりながら、私はやっぱり嫌悪感を拭えませんでした。 だってこの術の前ではプライバシーとか皆無だし……
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