第2話 ある領主の怒りと、心優しき奴隷達

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「もともとお前達にはプライバシーなんてものは無い。余計なこと考えるな。それより俺様の安全を第一に考えろ」 『月の瞳』を使用すると意識が全て宙に浮かぶ瞳に持っていかれてしまいます。シーグ様ほどの使い手ならそれを少し軽減して会話くらいなら出来ますが、体を動かすことは出来なくなってしまいます。 よって今の私の使命は動けなくなったシーグ様を守ること。 「なる程、分かりやすい奴が数人いた」 宙に浮かぶ黒の瞳。この瞳は水平線まで、つまり見える範囲全ての真理を読み取る術です。 建物なら釘が何本使われているかまで、人なら思考にまで及ぶ内部状況など、それも水平線までなら障害物があろうと関係ありません。もっと瞳の高度を上げればさらに遠くまで見通せるでしょう。 「分かりやすい奴?そんな悪人面なんですか?」 本当なら術の発動を止めてから聞いた方がよかったのですが、好奇心に負けて反射的に聞き返してしまう私。 「悪人面というか悪魔だ」 そんな私に嫌な顔一つせず答えてくれるシーグ様。大きく表情を変えるほど体に自由がきいてないので、実際にはしていたかもしれませんが…… 「よし完璧。事の真相から奴らの過去の汚点まで全て読み取った」 これこそ悪魔に相応しいという程邪悪な笑みを浮かべ、術を解除したシーグ様。首を廻しながら立ち上がります。 「……やはり『月の瞳』は疲れるな。頭がパンクしそうだ」 そう『月の瞳』の欠点は見るもの全ての情報が頭の中に入ってきてしまうこと。並の人なら発狂してしまう程。優秀なフェルナンデスの家系でも使える人が少なかったという話から、シーグ様の消耗度が伺えます。
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