第2話 ある領主の怒りと、心優しき奴隷達

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「観念しろゴミ屑野郎。ぐちゃぐちゃにして地獄の釜に捨ててやるからよ」 顔色も悪くいつもより覇気のないシーグ様。しかし醸し出す迫力は空気が震えていると錯覚する程。 そんなシーグ様が見るのは山羊のような敵ではなくその隣。まるで紳士のような格好をした妙齢の男性。背に生やす蝙蝠のような翼が無ければ人間にしか見えません。 「素晴らしい、光のフェルナンデス。私達の存在に気付いたのは君が初めてだよ」 一目で判る本物の香り。見た目こそ人間ですが、隣の山羊のような敵よりも圧倒的に恐怖を感じます。 「寝小便垂れが俺様に話しかけるな」 シーグ様の言葉にピクリと眉を動かす敵。 「何を言っているのかーー 光属性、拾壱の魔導書。『衣』 ーー判らないな!」 言葉の途中に振り上げられた手からは漆黒の槍が二本。シーグ様と私に向かって飛来する槍も、シーグ様の生み出した光の衣に阻まれます。 光の衣を纏った私達は、不意打ちをして尚平然と佇む敵を睨みつけます。 「人間如きがこうも易々と魔を操れるとは驚きだよ光のフェルーー 「おい、言ったよな?」 敵の言葉を遮り、此方に来て初めてシーグ様が動きます。ゆらりと踏み出した足。一見すれば隙だらけのその動作にも、シーグ様の威圧感に行動を起こせない敵。 「下衆如きが俺様に話しかけるな!」 光属性、拾八の魔導書。『槌』 瞬間、敵の居た場所は巨大な光の槌に打ち抜かれました。 立ち上る土煙。光の槌は地面に埋まる程の力で敵を打ち潰しました。 「まずった。人型の方はともかく山羊の方は死んだかもな」
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