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ただ黒が……
と、言っても『黒』と言う存在すら存在しなかったので、便宜上『黒』としているだけなのだが……
その『黒』が拡がるだけの『世界』に、『それ』は、突然現れた。
黒以外の『黒』。
黒より黒い『黒』。
その黒は最初、黒の拡がる世界を漂うだけだったが、次第に何かしら意思を持ち始め、回転や変速などをして『泳ぐ』様になった。
それから、人間の時間で言う数億年が経過したころ、『それ』は黒いだけの空間に、大小様々な丸い石を転がし始める。
数は瞬く間に増え、黒の空間は石がそこかしこに存在する、ごちゃごちゃした空間に変わっていた。
『それ』は、その有り様に落胆を覚え、石の幾つかに火を着けてしまう。
石は燃え、爆裂し、黒の空間を照らす灯りとなる。
石の灯りは空間に『光』をもたらし、光は『それ』に、自らの姿を確認させる切っ掛けとなった。
『それ』は自らを認識し、急速に意識を活性化させる。
丸い石の配列を何度も変え、数億年と言う時間をかけて経過を見る。
最初、意味不明だったその行為は、時間の経過と共に意味を持ち、『それ』に、『楽しい』という感情を能えた。
配列を変えた石の幾つかで、明確な変化が起こったのである。
『それ』は、石の上に、自分以外の『意識を持つモノ』の存在を感じた。
『意識を持つモノ』の意識は、ただ『生きる』という事に突出した意識だったが、その存在自体が、嬉しかった。
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