闇ノ月*第一夜

2/10
586人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
        『昌浩……』                       誰かが、俺を呼んでる。     哀しみを、痛みを含む声で……     「誰…? どうして俺を呼んでるの?」     此処は暗くて…寒い。     果てのない闇。誰も居ない──……、音もしない暗闇の世界。     「…ッ!……」     この暗闇の世界には、『自分』以外には『誰』も居ないのだという恐怖が昌浩を襲う。     「…ッ…もっくん…じい様…彰子!」     名を呼んでも、それに応える者は此処にはいない     「イ…ャ……一人は、…嫌だ…誰かッ!」     『一人』、その不安に昌浩の心は押し潰されそうになる。 ――怖い…一人は嫌だ。お願いだから、一人にしないで。誰か傍に居て!     昌浩は無意識に自分自身を抱きしめていた。小さく震えるその身体を、不意に、誰かに抱き締められる。     「…ヤッ!?…」     『…昌浩。』     優しい声音。あの、大好きな紅い神将の物と酷似していたが……違う、哀しみを含んだ優しい声。     『大丈夫だ、お前は一人じゃない。……だから、もう泣くな』     そう言われて、自分が泣いている事に気付く。青年の手が優しく頬に触れた。     「…だ…って、此処には誰も居ない。もっくんもじい様も彰子も…みんな、居ない」
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!