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『昌浩……』
誰かが、俺を呼んでる。
哀しみを、痛みを含む声で……
「誰…? どうして俺を呼んでるの?」
此処は暗くて…寒い。
果てのない闇。誰も居ない──……、音もしない暗闇の世界。
「…ッ!……」
この暗闇の世界には、『自分』以外には『誰』も居ないのだという恐怖が昌浩を襲う。
「…ッ…もっくん…じい様…彰子!」
名を呼んでも、それに応える者は此処にはいない
「イ…ャ……一人は、…嫌だ…誰かッ!」
『一人』、その不安に昌浩の心は押し潰されそうになる。
――怖い…一人は嫌だ。お願いだから、一人にしないで。誰か傍に居て!
昌浩は無意識に自分自身を抱きしめていた。小さく震えるその身体を、不意に、誰かに抱き締められる。
「…ヤッ!?…」
『…昌浩。』
優しい声音。あの、大好きな紅い神将の物と酷似していたが……違う、哀しみを含んだ優しい声。
『大丈夫だ、お前は一人じゃない。……だから、もう泣くな』
そう言われて、自分が泣いている事に気付く。青年の手が優しく頬に触れた。
「…だ…って、此処には誰も居ない。もっくんもじい様も彰子も…みんな、居ない」
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