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『――昌浩』
「……ひろ!……昌浩……!」
ふ、と目を開けると見慣れた白い物が見えた。
「……ん…もっくん?…あ…れ?何で俺、泣いて?」
「どうしたんだ?怖い夢でも見たのか?」
優しい夕焼け色の瞳が心配そうに見つめてくる。
「うーん……?それが、あんまり覚えてないんだよね」
(――……あれは多分、もっくんが─…紅蓮が俺を忘れた時に何度も見た夢。でも、最後のアレは……?)
昌浩が一人で悩んでいるその横で、物の怪は不機嫌そうに顔を歪めた。
「おい……晴明の孫…」
「孫言うな!物の怪の分際でっ!」
「物の怪言うな!」
「昌浩、どうしたの?」
二人の声を聞きつけて、彰子が昌浩の部屋へと訪れた。
「まぁ、どうしたの?目が真っ赤よっ?今、冷やす物を持ってくるわね」
慌てて部屋から出ていった彰子と入れ替わるように、六合が顕現した。
「どうかしたのか?六合」
紅蓮の問い掛けに口を開こうとした六合の動きが止まる。昌浩の顔をジッと見て、睨むように物の怪を見つめる。
六合からの無言の圧力。紅蓮は耐え切れず視線を泳がせた。
どうやら昌浩の瞳が赤い事に気づき、その原因は物の怪にあるのではと勘違いをしたらしい。
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