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「だからッ!!オレじゃないって言ってるだろ!」
「……別に何も言ってないだろう」
瞳が言ってんだよ!瞳がッ!!
口では『何も』――と言っておきながらも怒気を孕んでいるその瞳は、言っている事と正反対に物の怪を睨んでいる。
……まぁ、それだけ昌浩の事を心配しているという事なのだから良いと言えばそうだが、昌浩に何かあるたびに俺を睨むのだけは止めてくれ。
……青龍といい六合といいどうして俺だと決めつけるんだ?……というか、何故いつも俺のせいなんだ?
ハァ、と溜息をついている物の怪の後ろ姿には哀愁が漂っていた。それを横目で、苦笑を漏らしながら昌浩は見ていた。
「……それより、何か用事があったんじゃないの?彩輝」
昌浩に二つ名を呼ばれ、六合の怒気を孕んでいた瞳は和らぎ、淡く微笑んだ。
「ああ、晴明からの言伝だ。支度をしたら直ぐ部屋に来るようにと…」
その言葉に昌浩は首を傾げる。
「…した…く…?何の?今日は物忌みじゃないの?」
「…ああ、それは…そうなんだが………」
六合は何か言いにくそうに言葉を濁した。
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