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私はこくりと頷いてドアの前で一樹を待った。
一樹はリュックを片手に慌てて外に飛び出してきた。
「歩香ちゃん、御免ね。早く、早く行こう!!」
一樹は私の手を必死になって引っ張る。
一樹のシャツは襟元が何故か乱れ、首筋には新しく紫色の小さな痣が二つ出来ていた。乱れたシャツの下は大きな傷と痣。
「一樹、どうしたの?!」
一樹は私の質問には一切答えない。
「いいから急いで!!」
一樹の表情は何故か必死そうだった。
私は何が何だかさっぱり解らず家からかなり離れた別の場所の森林公園に来ていた。
その場所は幽霊が出るだの変質者が出るだのと言われ有名で、余り人が来ない。
殆んど止まる事無く走ってきた為に私は息を切らした。けれど一樹は力なく地面に座り込んだ。
「………良かった。何とかなった………歩香ちゃん、御免ね。御免。御免なさい………。」
一樹はそういって何故か泣き始めた。
私は一樹が何故そんなにも謝るのかさっぱり解らなかった。
傘も置き去りにしてびしょ濡れの私は何故か急に悲しくなり声を上げて泣いた。
一樹もずっと「御免なさい」を繰り返しながら泣いていた。
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