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「あっ、警察の人が来たよ!!」
おばさんは私の腕を掴んで引っ張る。
警察の人間は白い担架の様なモノを運んでいった。
あの頃の思い出が鮮明に鮮明に思い出されていく。
恐怖は不思議と感じられなかった。寧ろあの頃感じていた妙な感覚が体の中を走り回る。
淋しい様な悲しい様な。
それでいて、私は実際それがどうなろうと私には関係が無い訳だ。
一言語れば無関心。全てに置いてどうでも良い。
「あ、あの、私朝練の時間有るんで御免なさい!!」
私は笑ってぺこりと頭を下げた。
「ああ、いってらっしゃい!!気を付けてね!!」
おばさんは笑って手を振った。
勿論朝練なんて逃げる口実に過ぎない。
全くもってやる気が起きない。
体の力が全体的に抜けていく様な感覚。
それが強くなる度に頭の中で響く言葉がある。
「また殺されちゃったからお墓を作らなきゃいけないんだよ。」
視界が廻る。段々頭が痛くなる。
私はとうとう立っていられなくなり道端に座り込んでしまった。
通り過ぎる人々が何か汚らしいモノを見るかの様な目をして去ってゆく。
「…葬式ごっこ。」
私はぽそりと囁いていた。
この日は嫌気が差すほど天気の良い朝だった。
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