昼休みの変人

6/8
前へ
/8ページ
次へ
 フェンスを挟んで、先輩はにやりと笑った。まさかそんな止め方をしてくるとは。 「飛び降りだろう? やめておけよー、飛び降りは。死体を片付ける人の気持ちを考えろ」  先輩はフェンスを激しくゆする。おいおいやめてくれ。このままじゃ本当に落ちてしまう。  ……あれ。 「いま、お前は落ちたくないと思っただろう?」 「……確信犯だったんですか」  だとしたらタチがわるい。しかし確かに、危ないからやめてくれ、と思ったのも事実だった。  来たときは死ぬ気満々だったのに、人間の心というのは曖昧で情けないものだ。 「どうせ死にたいと思っていたのなら、死ぬ気で俺の計画についてきてみないか? ナンバーツーの座をやろう」 「いやいりませんよ!」 「そうか?」  なんだか知らないが満足そうに笑って、先輩はフェンスから手を離した。とりあえず、これで一安心……なのだろうか。 「……自殺未遂の理由は聞かないんですか?」 「そうだなぁ、君が俺の手下になるのなら聞いてやろう」  なんて理不尽な交換条件。しかもナンバーツーから手下ってランクダウンした気がする。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加