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フェンスを挟んで、先輩はにやりと笑った。まさかそんな止め方をしてくるとは。
「飛び降りだろう? やめておけよー、飛び降りは。死体を片付ける人の気持ちを考えろ」
先輩はフェンスを激しくゆする。おいおいやめてくれ。このままじゃ本当に落ちてしまう。
……あれ。
「いま、お前は落ちたくないと思っただろう?」
「……確信犯だったんですか」
だとしたらタチがわるい。しかし確かに、危ないからやめてくれ、と思ったのも事実だった。
来たときは死ぬ気満々だったのに、人間の心というのは曖昧で情けないものだ。
「どうせ死にたいと思っていたのなら、死ぬ気で俺の計画についてきてみないか? ナンバーツーの座をやろう」
「いやいりませんよ!」
「そうか?」
なんだか知らないが満足そうに笑って、先輩はフェンスから手を離した。とりあえず、これで一安心……なのだろうか。
「……自殺未遂の理由は聞かないんですか?」
「そうだなぁ、君が俺の手下になるのなら聞いてやろう」
なんて理不尽な交換条件。しかもナンバーツーから手下ってランクダウンした気がする。
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