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「そうだなぁ、そんなに屋上が好きならここを秘密基地にしようか」
「随分と開放的な秘密基地ですね」
先輩は再度にやりと笑った。ああ、見ているだけで黒く阿保な空気が流れ出て来るようだ。
「ツッコミ役は重要なポジションだ。どうだ、死ぬほどひまなら俺と手を組もう」
彼の提案にどうにも返事ができずに黙っていると、またフェンスが激しく揺れた。見てみると、先輩がフェンスをするする登っているじゃないか。
「何考えてんですか!」
「掴まれ、こっちに引っ張ってやるから」
先輩の勝ち誇ったような顔が、僕をさらに臆病にさせた。思わず、のばされた手を掴む。
死のうと覚悟して、おそるおそる外側に下りたのに、いとも簡単にフェンスの内側に引き戻されてしまった。こうあっさりだとなんだか拍子抜けしてしまう。
「まあ、正直お前の意見など知らん。だがお前にここで死なれると、屋上で作戦会議ができなくなるだろう」
「そうですか」
まぁ、と先輩は言った。
「命の恩人として君は俺の奴隷になれ」
「やっぱりランクダウンしてる! あと命の恩人はなんか違います」
「やぁ、本当に素晴らしいツッコミだ。よし、行こうじゃないか、仲間探しに」
「え、まだ誰か巻き込むんですか」
「当たり前だ!」
……あぁ、不安だ。本当にこの人といて僕は大丈夫なんだろうか。勝手に他人を助けて、勝手にこの学校を征服しようとしているこの大阿呆に。
でもまぁ、一度は未遂でも死んだ身だ。第二の人生を阿呆に過ごすのも悪くないかもしれない。
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