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からかう様な嘲りを含んだ声が、潜助の耳元で聞こえる。
すぐさまに振り向くも、影も形も無い。
「飽きて来たね……!? そろそろ、本気で仕舞にしようか……!?」
散々弄ばれた挙げ句、姿の見えない暗殺者に潜助の緊張の糸は張り詰めっ放し。
「い、いい加減に……!? す、姿を見せたらどないや……!?」
荒い息もそこそこに、辺りを見回す。
「そんなにアタシを見たいかい……!? なら、見せてやるよ……!!」
突如闇を貫き、龍舌蘭の縄が首に巻き付く。
普段なら首に巻き付くだけだが、今回は右手首にも巻き付いた。
そのまま急角度で持ち上がり、地面から二尺程の位置で宙吊りになる。
「どうだい……!? 利き腕ごと吊り上げられた気分は……!?」
右腕を動かせば、縄がやや緩むものの。
根本的な解決にはならない。
「まだ、終わりじゃ無いンだよ……!!」
腰の矢立を抜き、腕と首を目掛けて水を掛ける。
どうも武闘扇子の縁には刃が仕込んで有るらしく、縄を切ろうと四苦八苦している潜助に水が頭から掛かった。
途端に、急激な収縮が発生し潜助の右手首と首を同時に締め上げる。
骨の軋む音が鳴り、潜助はもがき始めた。
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