いち.風が吹いた日のできごと

5/23

1751人が本棚に入れています
本棚に追加
/256ページ
「……あれ?」 いっこうに誰も出てくる気配がない。 表札を確認。しっかりと日向の文字があった。 「いないのか…?」 そう言ってドアノブに手を掛けてみる。 すると、容易にドアは開いた。 「鍵掛けてないのか…?」 ドアを一旦開ききって中を見る。 その瞬間、和馬は目を疑った。 「美羽?」 玄関の靴置き場より少し奥に、パジャマ姿の美羽が倒れていたからだ。 「お、おじゃまします!」 すぐさま靴を脱いで中へ入る。 美羽の横に跪き、 「美羽?どうしたんだ?」 「ん……和馬君……、こんばんは…」 ゆっくりと開かれた目は、どこかとろんとしていた。 頬も、赤い気がする。 「まさかな……」 ぺと、と美羽の額に手を置く。 家の中は少し肌寒いにもかかわらず、ホッカイロでも当てていたかの様に、美羽の額は熱かった。 「熱があるな……美羽、布団どこだ?」 「……ん…」 ゆっくりと階段の上を指をさす美羽。 和馬は美羽を背負って、一歩ずつ登っていった。
/256ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1751人が本棚に入れています
本棚に追加