いち.風が吹いた日のできごと

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「……私の…部屋…」 「え?」 階段を登った先にあるのは、一つの部屋。 入っても良き物か、かなり迷った末に、結局入った。 「よっと…。ほら、布団かぶれ」 「……ん…」 ベッドにおろし、布団を掛け、横に座る。 「大丈夫か?」 「……だい、じょう…ぶ…」 苦しそうに呼吸しながら、そう答える美羽。 大丈夫じゃなくてもそう言うことくらい、和馬には分かっていた。 「そうか、んじゃ気を使わせるのも悪いし、俺はこれで……」 立ち上がろうとすると、くん、と服を軽く引かれる。 美羽が布団から小さく手を出し、和馬の服の裾を掴んでいた。 「……やっぱり、…だいじょうぶじゃ、ない…。……だから…」 「だから?」 とろん、と憂いのこもった瞳で和馬を見つめ、美羽は絶え絶えに呟く。 「……もうちょっと… 、ここにいて……」 選択肢なんて、はいかイエスかしか存在しなかった。
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