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足を向けた先は大きな両開きの入り口のあるレストランだった。
二階から一階を見下ろすことができる構造で、丸いテーブルとカウンター席があった。
客入りは八割といった感じで、商隊と思われる大男達が酒を飲んでいた。
カウンター席の傍らに荷物を下ろすと、丸イスに腰掛けた。間もなく店員が来た。
「ご注文は?」
「パスタと水」
店員は注文を受け取ると店の奥へ消えた。
「ようようお嬢ちゃん、一人で何やってんだ?」
酔っ払いの男がレイナの隣に座った。強烈なアルコール臭が鼻をつく。男はさらにレイナに顔を近づけた。
「なぁお嬢ちゃん、どっから来たんだ?」
レイナは男を見る素振りは見せなかった。
「ようよう、無視すんじゃねぇ」
男はふいにレイナの頭のターバンを引き離した。すると白に近い銀色の髪が、宙に舞う羽毛のように現れた。
「こいつは驚きだな。お前何者……」
男はそれ以上口を開かなかった。レイナは瞬時に拳銃を引き抜くと、男の額に銃口を当てた。
「額に三つ目の眼窩を作りたくなかったら、ターバンをここに置いて私の目の前から三秒以内に消えなさい」
男はイスから転げ落ちると去っていった。他の客はいなかった。喧嘩はよくあることなのだろう。
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