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「ガタンッ…ッガッタン」
電車の音が近いてくる。山梨の田舎から東京の美術予備校に出向く日の春の爽やかな朝のホームは、人もまばらで駅前などせいぜいTUTAYAがあるくらいのもの悲しさ。人口のほとんどが老人ではこうもなる。路肩の中年のタクシードライバーなど新聞を観ながらまるでハンモックにでも横たわるかのごとく座席に身をゆだねゆったりしている。
「30分に電車一本ってありえないよなぁ…」
彼、地元友達の千尋と連れで電車にのる予定だ。
「なぁ。」
答える声には張りもなにもない。一本逃した後なのだから。
「ガガ…キギィイ」
電車は停止場所を少しはみ出して停まった。
そそくさと車内に乗り込み足など広げ放題だ。
窓に流れる盆地を見ながら思う。
別にハチクロブームにのって美大を目指すわけでもなく、頭は下から数えたほうが早いけど大学なと探せばあったし、浪人という選択をした自分を不思議に思った。
小さい頃からアニメが好きでいて中学では漫画ばかり描いていた。高校でもそのつもりだったが、美術部にはいると油絵をかかされ、それが板についてしまった。その結果が美大浪人。
学生だが種類は別だし、大学に入るために一年間大金を払い学ぶわけで、しかも美大など就職率もいいわけではないのだから、もしかしたらニートよりたちが悪いかもしれない。
車内で一緒に揺られる大学生の千尋が羨ましくみえた。
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