序章 父と落雷とロボキング

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小学校の3年になっても 私はまだ、この言葉を信じていたものだから、 滑稽という他ない。 当時の父は表情には出さないまでも、 間違いなく笑いを堪えていた、はずだ。 ロボキングというのは、当時TVで放映されていた子供向けアニメで、 悪役として登場するいわゆる「悪の親玉」であり、 一部の子供達の間では、主人公よりも人気を博している「隠れヒーロー」でもあり、 つまり恐怖の象徴とでもいうべき存在だ。 当時の父が自分の子供に物事を教えるのに、 なぜそのロボキングを使ったのか、今でもその理由は分からないが、 とにかくそのおかげで子供の私にとって、 雷の夜は生きるか死ぬか、それほどの意味を持った深刻な夜になったことは確かだ。 落雷という自然現象にも、 まだ数回と遭遇したこともないのに、だ。 「ロボキングは本当に人を襲うの?」
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