4人が本棚に入れています
本棚に追加
/54ページ
「しっかりしろよ。純のことだ、どうせまた厄介事に巻き込まれてるんだろ」
「まあ・・・確かにね。・・・でも今回は違うんだ兄貴。僕が自らその厄介事に立ち向かいたいんだ。僕の意志で、その道を選んだ」
「珍しい事もあるもんだ。それで?質問ってのは何なんだ?」
「神谷恵について知りたいんだ」
一瞬、兄の顔が険しくなった。
「兄貴と同じ北高の二年生だ。女だから音楽科に在籍って事になるね。兄貴と同い年だ」
「純からその言葉が出るなんて予想もしなかった・・・確かに。うちの音楽科の生徒だ。でも、だからどうした?彼女が純に何の関係がある?」
「関係はないよ。ただ知りたいだけだ。彼女について知りたい」
私がそう言うと、兄は私から視線を外して俯(うつむ)き始めた。
頭の中で情報が交錯しているようだ。
「目的によるな。純はそれを知ってどうしたいんだ。」
兄が私から神谷恵の名前を聞いた途端にその態度が急変したのは明らかだった。
それにどんな意図があるのか私には見当がつかない。
でも兄が神谷恵の情報を持っているのは確かだ。
そしてその情報がどんなものであったとしても私にはそれを受け止める覚悟が出来ていた。
一つの確信があったからだ。
それについては兄に“質問”するのではなく、 “確認”をしにきたつもりだ。
「“盲目”の彼女を助けたいんだ。彼女は目が見えない。そうだろ?兄貴」
最初のコメントを投稿しよう!