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窓ガラスの向こうにもう一人の神谷が写し出されていた。
(ガラス越しの自分は非常に疲れきっているな)
神谷は思わずガラスの向こうに居る自分に向かって苦笑いをする。
完全に垂れ下がった目、ボサボサで伸びるところまで伸びきった髪、よれよれのスーツ。
こんな自分が社長に気に入られてるなんて、と思うと神谷は不思議な気持ちになった。
「--池袋に到着します。お出口は右側です」
そうアナウンスが鳴って神谷は立ち上がる準備をする。
今までの疲労が彼の身体にのしかかった。
(重い……)
彼はまるで荷物を抱えるように立ち上がった。
のそのそと歩き、やっとの思いで改札を抜ける。神谷は両膝に手をついた。
今まで経験したことの無い苦痛。今にも押し潰されそうだ。
(きっとストレスが溜まってるんだろうな)
神谷はゆっくりと背筋を伸ばし、また歩きだそうとする。
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